エネルギー業界の5つのD

人々の日々の生活や産業から切り離すことはできないエネルギー。これまで国が中心となって中央集権的に進めてきたエネルギー業界は、今、5つのDで表現される変革の時を迎えていると言われています。それらは、以下の5つです。

・Depopulation(人口減少・過疎化)
・De-carbonization(脱炭素化)
・De-centlization(分散化)
・Deregulation(制度改革)
・Degitalization(デジタル化)


(引用)2050年のエネルギー産業- 日本のエネルギー大転換 -, 経済産業省

今回は、Digitalizationに着目し、エネオクとの関係性を説明していきます。

エネオクとDigitalization

はじめに、Digitalization(デジタライゼーション)とは何なのでしょうか?似たような言葉にDigitization(デジタイゼーション)という単語もあります。もう少しこれらの言葉の意味を考えてみましょう。

Digitizationは、情報を0と1で表す符号に置き換え、コンピュータがデータ処理できる形にすることの意味で使われます。すなわち「デジタル化」です。

Digitalizationも日本語に訳すと、上記の通り「デジタル化」になりますが、ここ数年ビジネスの文脈上では、Digitizationと区別されることが一般的になっています。このような文脈で使われる場合の定義には、アメリカのIT関連の調査・アドバイザー会社であるガートナー社の文面がよく引用されています。

Digitalization is the use of digital technologies to change a business model and provide new revenue and value-producing opportunities; it is the process of moving to a digital business.


(引用) Digitalization – Gartner IT Glossary, Gartner

この英文による定義を簡単に訳すと、Digitalizationとは「デジタル技術を利用することにより、ビジネスモデルの変化させることや新しい価値を生み出すこと」となります。

エナーバンクでは、電力の小売自由化を背景にエネルギー業界のDigitalizationの一つの形として、全国の小売電気事業者から最安の電力契約を見つけられるオークション型の仲介サービス「エネオク」を運営しています(補足ですが、電力の小売自由化は5つのDのDeregulationと関係しています)。

このサービスで実現していることは、需要家の過去12か月分の電力使用量・料金の明細書や数値をデジタル化させるだけでなく、それらのデータをもとに年間電気料金を見積もりするリバースオークションの場を提供します。

また、リバースオークションの結果をもとに、最安値で入札した小売電気事業者と契約させるのではなく、需要家と小売り電気事業者のコミュニケーションの場となるチャットも提供しています。これにより、必ずしも需要家の選定基準が最安だけでない場合でも、納得感のある状態で契約に進めることができます。

多岐にわたる需要家の要望や小売電気事業者の提供可能なサービスを、効率良く円滑にマッチングさせられることはDigitalizationを体現できていると考えます。

エナーバンクが考えるDigitalizationの要素の一つ:Web

また、エナーバンクの考えるDigitalizationには、Webの考え方や技術を積極的に取り入れようとしています。

Webは1990年代後半から進化を続け、その技術の発展とともに新しいビジネスやサービスを生み出し、インターネット上で様々な活動を行うためのプラットフォームとなっています。

まだまだ歴史の浅いエナーバンクがスピード感を持って進化していくためには、既にあるプラットフォームを最大限活用していくことが近道だと考えています。そのため、Webはオープンなものであるという考えのもと、エネオクもWebアプリとして提供し、特別なソフトウェアやアプリを必要とせず、インターネット環境とブラウザがあれば参加できるようになっています。

更なるDigitalizationの形作りに向けて

DigitalizationをWebという観点で深めていくために、継続的にWebの世界の動向をキャッチアップしています。

Webの技術は、World Wide Web Consortium(W3C)と呼ばれる組織で標準化されています。W3Cで標準化された技術は、Google ChromeやFirefoxなどのブラウザに搭載され、多くの人々が特殊なアプリやプラグインを追加することなく利用できるようになります。

W3Cでは同時並行的に様々な技術が議論されていますが、筆者が着目している技術の一つはブロックチェーン技術です。日本国内では、暗号資産(仮想通貨)に関する色々な事件があり、ユーザーサイドの盛り上がりとしては下火になっていますが、世界を見渡せばまだまだブロックチェーン技術に期待している開発者は多くいます。

先日、Blockchain community groupでは、Web上で分散台帳(ブロックチェーン技術とほぼ同義)を構築するためのデータ形式やプロトコルの独自仕様草案を提出しました。今後、ブラウザで簡単にブロックチェーン技術を使えるようになっていく可能性は高まっています。

リバースオークションという公正かつ透明性が求められるサービス上、エネオクもブロックチェーン技術との親和性は高いと考えられ、エネオク×ブロックチェーンによる更なるDigitalizationの形もあるのではないかと想像しています。

これからもWebやその他の技術をキャッチアップして、エネルギー業界の発展に寄与できるサービスやビジネスモデルの構築に取り組んでいきます。