2019年8月20日@dock-Kamiyacyo にて、第2回エネルギーテック勉強会を開催しました。

Introduction of Australian energy tech startups and an interest in Japanese energy market (Q&A session)- EnergyTech Studygroup vol.2

本記事では、キーノートスピーチを行って頂いた、オーストラリアでエネルギーテック特化のアクセラレーター組織EnergyLabの創業者兼会長を務める、Piers GroveさんとのQ&Aセッションのテキストをお届けします。

なお、EnergyLab会長 Piersさんのスピーチ動画(日本語字幕あり)は、こちらをご覧ください!

 

Piersさんスピーチ後のQ&Aセッション

質問1. エネルギーテックでは規制との関わりが不可欠だと思うのですが、オーストラリアの電力業界の規制について教えてください。
Q1. Can you share us about the regulation in Australian energy market?

 

回答1. オーストラリアのエネルギーマーケットは、ここ10-15年は州ベースで動いており、今後国として統一する方向に動いています。州ベースのため発電アセットの多様性がありますが、それでもマーケットの中での規制は厳しく、新しいビジネスモデルを試すためには障壁となっています。新しいビジネスモデルが出てきている最中は、多くの場合規制は既存の発電会社のビジネスモデルを守るように設計されているため、まだ興味深い変化は起こっていないのが現状です。そのため、例えばP2P電力取引や発電の仲介事業者などは規制がそれらのビジネスモデルに適応するように変わっていくをまだ待っている状態です。

 

A1. The Australian energy market is gone through by the state-based system about 10 to 15 years ago and moved towards the national single market. That’s allows for the bigger diversity of generation assets, but the regulations are still quite tight in the market and prevents the business models from being trial. The regulation is designed in many ways to protect the incumbent generators’ business model while the new one is still emerging, so there is an appetite change hasn’t happened fully yet. So the things like pier to pier trading and intermediate generators are still waiting for their own opportunity to be the regulation written for them.

 

質問2. 一般的な内容として、オーストラリアの家庭が抱えているエネルギーや電力に対する課題は何でしょうか?
Q2. What is the biggest issue for the Australian household in terms of energy and electricity?

 

回答2. オーストラリアのエネルギー価格は非常に高く、それはある意味では助かっている部分はありますが、そのために消費者はソーラーやエネルギー貯蔵において高額な初期投資が必要となります。一度投資してしまうと、最大限のリターンを得るためにグリッドを調整するのは困難であるのが現状です。また、オーストラリアでのルーフトップソーラーの導入は非常に多く、日中のピーク時においてソーラーエネルギーの価格はほぼゼロ程度まで落ちてしまい、消費者に投資を促すのが難しい要因の一つとなっています

A2. Energy in Australia is extremely expensive and in some ways that very helpful because of it drives uptake. We are looking to consumers to make significant upfront investments in solar and storage. And once they have purchased their investments, it could be hard to optimise them with the grid to maximise return. We have so much roof top solar in Australian out of the value of solar energy peak in the middle of the day that push down to zero, which is making difficult to convince people to invest.

 

質問3. オーストラリアの電源構成では石炭の比率が高く、安価でCO2排出係数が高い電力を使っていると思いますが、電力会社にどのように脱炭素を促すことができるでしょうか?
Q3. Coal is one of the biggest generation assets in Australia because it’s cheap, but it consumes a lot of CO2 for generating the electricity. How we can facilitate electricity company to move towards decarbonization option?

 

回答3. ほとんどの石炭による発電アセットは終焉を迎えようとしており、15-20年以内にはすべてなくなるべきであり、多くの場合一刻も早くというのが求められています。少なくなりつつある石炭の使用に代わって、現在はベースロードパワーとして天然ガスの使用がかなり増えています。石炭はオーストラリア第二位の輸出産物であり、かつオーストラリアの主要な産業であるため、石炭産業や石炭アセットを終わらせることに抵抗する勢力が多くいるのも事実です

A3. Most of Australia’s coral generation assets are reaching end of life and need to be retired within next 15-20 years. This is sooner we would like in many ways. We are moving to using quite a lot of natural gas to replace the coals as it comes offline for baseload power. Coal is the Australia’s second largest export and it’s a major industry in Australia, so there is a lot of resistants to retire Australia’s coal industry and coal assets.

 

質問4. Power Ledgerがエネルギーマーケットにおいて次の支配的なプレイヤーになるポテンシャルについての見解とそれに対する批判は見受けられますか?
Q4. What is your view on Power Ledger’s potential as a platform as well as maybe becoming the next dominant player in the energy market? Any criticism as well?

 

回答4. 私の見解としては、Power Ledgerが主要なパワーになるためにはまだまだ道のりは長いと感じていますが、パースや世界の各地で行われているトライアルは興味深いと思います。現段階では、彼らのモデルはエネルギーの小売業者の介入が不可欠になっており、小売業者に依存することはブロックチェーンの技術の有用性を低下させてしまうと思います。現行の規制では、ブロックチェーンによるP2Pの仕組みが成り立つためには小売業者に依存せざるをえないというのが現状です。そのため、現在は3社ほどの小売業者とトライアルに取り組んでおり、規制が彼らのビジネスモデルにとってやりやすいように変わっていくように働きかけてはいますが、スケールアップにはまだまだ厳しい道のりが待っており、オーストラリアではなくその他の国で実証実験を行っているのもそのためです。

A4. I think Power Ledger has still got a long way to go before they become a dominant power. I think their trials in Perth and around the world is interesting. And this stage, their model is restricted by the made to involve energy retailer to make it work which undermine the usefulness of the blockchain technology that they rely on. Regulation means that while they are trialling pier to pier technology in the block chain, they still rely on retailer to make that functional. So they may present three retailers and to regulation makes things better for them. They are going to have a hard time scaling which is why they are looking for other opportunities around the world outside of Australia.

 

質問5. ピアースさんが特に注目しているエネルギーテックのスタートアップは、どんなビジネスモデルですか?
Q5. What kind of energy tech startups are you currently interested in and what kind of business model do they have?

 

回答5. ソーラーの商業と産業へのアプリケーションは大きく注目する分野であり、マーケットも非常に大きく参入の可能性も大きいと思っています。ルーフトップソーラーは今までは家庭用に限られていましたが、産業へのアプリケーションにおいて今後様々なベンチャーの出現が期待されるでしょう。オーストラリアは、バッテリー貯蔵においては最先端を行っており、まだまだ注目するべき興味深いビジネスモデルが多く存在しています。最後に、デマンドレスポンスとグリッドのデマンドを大きく変動させる技術などは参入の機会も大きく注目するべき分野だと思っています

A5. Solar on the commercial and industrial applications is very exciting and enormous market opportunity. Rooftop solar has been largely limited to residential and we are going to see big ventures there. Australia is leading a way in storage of batteries and there are a whole bunch of interesting business models that still being explored. And I think finally the opportunity with demand response and ability to dynamically change the demand on the grid has the lot of opportunities.

 

質問6. エネルギーテックにおいて、成功する起業家とはどんな起業家ですか?そのような人のバックグランドはエネルギー業界にあるのか、それとも他の業界のあるのかどちらでしょうか?
Q6. Generally speaking, what kind of entrepreneurs are successful in energy tech? What’s their typical background? Those from energy industry, or other industries?

 

回答6. とてもいい質問だと思います。私たちが活動をしていく中で、忍耐強い起業家がエネルギーテックのスタートアップを立ち上げるにはベストであると分かりました。ソフトウェア関連のスタートアップとは違い、エネルギーテックのスタートアップを立ち上げるにはどうしてもより長い時間がかかるため、年配で経験豊富な起業家が向いていると思います。また、マーケットや技術を熟知している人が適しており、例えばエネルギー産業に属していたり、アカデミックなバックグランドを持っている人が向いている傾向にあります。最後のグループとしては、同じようなサービスを同じようなマーケットで提供しているが、エネルギー産業とは違う分野から来た人々で、特に通信やデータなどコミュニケーション産業から来た人はマーケットに共感を抱いている人が多く、エネルギーテック起業家としても適している傾向があると思います。 

A6. It’s a good question. We find that the best entrepreneurs are patient entrepreneurs. The time taking to build a startup is much longer than with software, so we can do attract older and more experiences entrepreneurs. We also find that having a very detailed and technical knowledge of the market is important, so that tends to preference people with industry experience and academic background tend to do better. And the final group is people coming across from the other industries that services in the similar market, so people from the communication’s industry, from the telephone and data tend to have an empathy for the market.

 

パネルディスカッションの様子

なお、イベント後半は、エネルギーアナリストの大場さんをお招きして、「エネルギーテックの国内への実装について」をテーマにパネルディスカッションを開催しました。

パネルディスカッションの様子は、エナーバンクの村中さんのnoteをご覧ください♪

エネルギーテック勉強会は、株式会社シェアリングエネルギー株式会社エナーバンク(SEB, Sharing Energy Bank)が共同主催する、エネルギーテックに関する勉強会です。

エネルギー業界に関わっている方はもちろん、エネルギーテックに関心をお持ちの方向けに、業界の基礎知識からテック系の話まで、幅広く展開します。

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