地球温暖化が問題視されている中、その原因物質と言われている二酸化炭素(CO₂)を貯蔵していくCCS(Carbon Capture and Storage:炭素貯蔵)の技術はどこまで開発が進んでおり、どの程度実際に導入されているのか。本記事ではGlobal CCS Institute <https://www.globalccsinstitute.com/>が出しているレポートやデータをもとに世界や日本の事例を紹介し、検証していく。

CCS施設は世界全体で98施設!?

Global CCS Institute “The Global Status of CCS 2018” のデータをもとに作成

CCSの施設は世界全体で98施設(※1の13頁)に上る。もちろんこの数にはパイロットテスト用や建設中の施設も含んでいるが、意外と多いと感じた人が多数いるのではないだろうか。

CCSの歴史は古く世界初の第一号CCSは1972年にアメリカのテキサスで誕生したものまでさかのぼる。当時はEOR(石油増進回収)事業の一環で、油田にCO₂や水を注入することで、産出量の増加を狙ったものだった。そこから20世紀までには4施設(北米地域3施設、ヨーロッパ1施設)しかCCS施設は存在しなかったが、地球温暖化の問題が世界で深刻に取り上げられるのに伴って、2000年に入ってから急速に施設数を伸ばしていった(※2のページ中段のマップを参考)。

各国が炭素貯蔵技術の開発に熱心に取り組んでおり、この数は今後も増えると見込まれている。中国では大規模なCCS施設計画が進んでおり20施設規模で建設する計画が進んでいるという(※1の49頁)。日本でも研究開発段階の施設もあり、地球温暖化の問題もあることから今後増えていくことが確実視されている。

CCSの施設はアメリカがダントツで多い

上の図は研究開発段階の施設を除いた、大規模CCS施設の世界の内訳である。世界初のCCSを施設を作ったアメリカを中心とする北米地域に施設が集中しているのがわかる(アメリカだけに絞ると10施設)。現在までに150MtものCO₂を貯蔵することに成功しているという(※1の53頁)。研究のリソースがアメリカにたまっており今後もアメリカを中心として世界にCCSが広がっていくと予想されている。

日本では2018時点でCCSプロジェクトは4件

日本で初めてのCCSプロジェクトは苫小牧に建設された施設であり、NEDOなどの支援も加わり、2012年度から実証実験をスタートさせている(※3)。2018年末時点で20万トンを超えるCO₂を貯蔵することに成功しており、2020年が終わるまでにこの量を30万トンに増やすことが目的だという(※1の62頁)。

日本には苫小牧の他に3つのCCSプロジェクトが広島や佐賀などにある。日本政府の短期期目標として、2020年前後でCCSの商用化、2021年ごろまでにCO₂を一億トン以上貯蔵できる地点を3か所以上選定することを目標に貯留層のリストアップを行っている(※4)。

佐賀県のCCSは世界最高の秘密!?

Global CCS Instituteの2018年レポートで、佐賀県のCCSプロジェクトが世界最高の秘密と評されています(※1の64頁)。佐賀県で進行しているCCSのプロジェクトは世界初の試みで清掃工場の排気ガスからCO₂を分離回収、商用化するという計画である(※5)。東芝と佐賀県がタッグを組みプロジェクトを推進している。

本プロジェクトは世界から多大な注目を集めており、佐賀の施設に世界各国から研究者などの視察が相次いでいるという。今後の佐賀CCSプロジェクトの動きに注目である。

(参考)
※1 Global CCS Institute, (2018) “The Global Status of CCS 2018”.

※2 Global CCS Institute “Global Status Report” <https://www.globalccsinstitute.com/resources/global-status-report/>
(最終閲覧日2019年3月18日)

※3 日本CCS調査株式会社「苫小牧のCCS実証実験」<http://www.japanccs.com/business/demonstration/>(最終閲覧日2019年3月18日)

※4 環境省地球環境局「わが国におけるCCS事業について」
<https://www.env.go.jp/council/06earth/y0618-17/ref01.pdf >、2017年9月5日(最終閲覧日2019年3月18日)

※5 Toshiba Clip「佐賀市発で世界初 最先端のCO2分離回収プラント」<
https://www.toshiba-clip.com/detail/3646 >、2017年9月6日(最終閲覧日2019年3月18日)

他のプロジェクトは