そもそも卒FITとは?

ここ最近、「卒FIT」が世間で話題になっていますが、一体どういうものなのでしょうか?

●卒FITとは?

まず、「FIT(フィット)」とは「Feed-in Tariff」の略で、「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」の意味を表します。

どういうことかというと、再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社が一定価格で一定期間買い取ることを国が約束する制度です。

この「FIT」の前身である太陽光発電の余剰電力買取制度というものが2009年11月から始まりました。

そして、この制度の買取期間は、買取を始めた月から10年(120ヶ月)です。例えば2009年11月から買取りが開始された場合、10年後の2019年10月分まで買い取るということです。

つまり、「FIT」の卒業を「卒FIT」といい、2019年11月以降、「卒FIT」を迎える太陽光発電が順次発生します。

さらに詳しく知りたい方はこちらへ

●2019年問題とは?

この「卒FIT」でなにが問題になるのか?それを表しているのが「2019年問題」になります。

2019年11月以降、「卒FIT」を迎える太陽光発電が順次発生し、電力会社が一定価格で一定期間買い取る義務がなくなります。

それだけならまだしも、国が「FIT」を発表した際、それと一緒に「11年目以降に適応されるであろう売電価格は、24円/kWhを想定」と発表してしまいました。

その後も2015年度まで「11年目以降は24円/kWhを想定」と発表したまま、2016年度になってようやく「11年目以降は11円/kWh」になるだろうと発表しました。

実際に、もうすでに大手電力会社や新電力などが電力買い取りを公表しているので太陽光発電によって発電された電力の売電先はできましたが、価格は後ほど詳しく解説しますが「7.15円/kWh~」と国が発表した想定価格とは大きく異なりました。

これらの問題を「2019年問題」といいます。

余剰電力買取制度と固定価格買取制度の違いは?

●余剰電力買取制度とは?

「余剰電力買取制度」とは、家庭等で太陽光発電で発電して余った電力を10年間、国が定める固定の価格で電力会社に売電することができることを国が約束した制度です。

この制度が開始された2009年当時は、太陽光発電がそれほど普及していなかったため、普及をさらに促進させるために、現在よりも高額な買取価格が設定されていたと思われます。

なお、ここでいう「余剰」とは(1ヶ月の太陽光発電からの発電量)ー(1ヶ月の電力使用量)ではなく、実際に太陽光発電から電力系統に流れた電気の量を指します。日中、太陽光発電が発電している間、自宅の電力消費を上回る発電を太陽光がした場合、その上回る分の電気(余剰電力)は電力系統に流れます。この余剰電力をリアルタイムに専用のメーターで計測したものを、余剰電力として電力会社が買い取ることになります。

また、2009年に開始された「余剰電力買取制度」は、2012年から「固定価格買取制度」に移行されています。移行のきっかけとして、東日本大震災があるとされています。2011年には100万件にも満たなかった住宅用太陽光発電ですが、「脱原発」を求める声や「固定価格買取制度」のおかげもあってか2016年には200万件も超える導入となり、再生可能エネルギーの普及に大きく寄与しました。

出典:一般社団法人 太陽光発電協会(JPEA)

●固定価格買取制度(FIT)とは?

「固定価格買取制度(FIT)」とは、家庭や事業者等で太陽光、風力、水力、地熱、バイオマス等で発電した電力を10年間、国が定める固定の価格で電力会社に売電することができることを国が約束した制度です。

このFITは余剰電力買取制度から移行したもので、2012年7月1日から開始されました。

出典:経済産業省資源エネルギー庁

固定価格買取制度について更に詳細を知りたい方は、経済産業省資源エネルギー庁のHPをご覧ください。

https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/

●全量買取と余剰電力買取の違いは?

余剰電力買取制度は、2012年7月1日から開始された固定価格買取制度に移行したと言いましたが、正確にいうと、まだこの制度は続いています。

どの区分に適用されているかというと、住宅用の太陽光など発電容量が10kW未満のものには今も適応されています。

また、固定価格買取制度でも10kW以上なら全量買取制度か余剰電力買取制度かを選択することができます。

●固定価格買取制度表

全量買取制度 余剰電力買取制度
再エネ種類 太陽光、風力、水力、バイオマス、地熱 住宅用太陽光
設備容量 10kW以上は固定か余剰か選択可能 10kW未満
買取期間 20年 10年

そして、「全量買取制度」とは、どういう意味かという電力会社の系統に送電された電気の量すべてを買い取る制度という意味です。

電気の供給方法については、家庭や事業所等に供給される電力と同じ引き込み線と接続する「余剰配線」と、再生可能エネルギー発電設備だけを系統連系する「全量配線」の二つの方法があり、10kW未満の太陽光発電設備は余剰配線のみですが、この区分以外では、余剰か全量かを選択することができます。

なお、いずれの場合にも、パワーコンディショナなどの発電設備で使用する電気が差し引かれますので、実際の売電量は、発電量全てではありません。

●国の狙い

太陽光発電システムの抜本的普及拡大により、「日本で使う電気は日本でつくる」という「エネルギー自給自足国家」を創出することが狙いです。さらに、太陽光発電は太陽電池の製造から、販売、施工に至るまで裾野の広い雇用効果が期待され、産業育成の観点からも重要と考えられています。

参考:経済産業省資源エネルギー庁

●満了日はいつ?

余剰電力買取制度が始まったのは、2009年11月です。住宅用太陽光発電設備の買取期間は10年間のため、2019年11月以降順次、買取期間が満了を迎える太陽光発電があります。

そして、買取期間の満了時期は、電気を売電している電力会社から個別で通知されることとなっています。通知時期は概ね、買取期間満了の6~4ヶ月前です。

※電力会社からの郵便物やメールなどを見落とさないように気を付けましょう。

出典:経済産業省資源エネルギー庁

最新!卒FIT後の大手電力会社の対応

大手電力会社の買取価格は2019年4月~6月に発表されます。
現時点で買取価格の公表がないのは、北海道電力、東京電力の2社になります。

電力会社 発表時期 買取価格
北海道電力 6月 未発表
東北電力 6月 9円/kWh
東京電力 6月 8.5円/kWh
中部電力 4月 8円/kWh
北陸電力 4月 8円/kWh
関西電力 4月 8円/kWh
中国電力 4月 7.15円/kWh
四国電力 4月 7円/kWh
九州電力 5~6月 7円/kWh
沖縄電力 6月 7.5円/kWh

2019.06.13現在

また、今までは大手電力会社へ売電していましたが10年経過し、卒FITを迎えた太陽光に関しては、各家庭が専門の業者や、電力会社(新電力を含む)と個別に売電契約を結び直す必要があります。

売電価格は大体7~11円/kWhになると思いますのが各新電力が発表している価格を調べる必要があります。

卒FIT後はどうすればいいの?3つの選択肢!

選択肢1:現在の電力会社に売電

10年間の固定価格買取制度が終わったあと、太陽光発電システムのオーナーが特に何も手続きをしなければ、今まで通り大手電力会社に売電されることになります。

また、経産省は、大手電力会社に対して卒FIT後も電力の買い取りを続ける他、売電契約に過度な縛りを設けないようにといっています。少なくとも最初の買い取り契約については違約金を設けないことと定められました。

なので、新しい売電先を決めかねている場合、一旦はそのまま大手電力会社への売電を継続し、その後ゆっくり売電先を切り替えるのか検討した方が安心でしょう。

選択肢2:新たな電力会社に売電

卒FIT後に新たな電力会社と契約して売電することです。現在、多くの新電力が買取に名乗りを上げています。現在までに分かっている新電力では、7円~11円/kWhの買取価格になる模様です。また、傾向としては新電力の方が若干高いです。

まだ買取価格を公表していない企業などもあり、これからもどんどん発表されるかと思います。気になる会社の情報を積極的に集めておきましょう。

選択肢3:完全自家消費する

卒FIT後の売電価格は、およそ7~11円/kWhと予想され、電力会社から電気を買う価格よりも安くなります。

しかし、自家消費だけで全電力を賄うのは現実的に難しいです。

では、どうすれば自家消費割合を増やすことができるのか。

考えられるのは、以下3つです。

①蓄電池の導入

一見、高価なものだと思う蓄電池でも、最近は値段が下がってきているものも多く、5kWで100万円を切るものも増えてきました。

②エコキュートの昼間利用

エコキュートは空気の熱を使ってお湯を沸かすシステムなので、昼間の空気が暖かいときにお湯を沸かしておくと、消費電力も低く、発電量の多いお昼間の電力を効率よく使用することができます。

③電気自動車(蓄電池)の充電

最後に、最近話題の電気自動車の活用です。

電気自動車の蓄電池利用については、蓄電池自体に補助金が出るので、自動車としても使え、かつ蓄電池としても使えるのでお得に感じます。

これを機に、電気自動車の購入を検討してみてはいかがでしょうか。

まとめ

FITってどういうこと?から卒FIT後の対応まで記事にしてみましたが、いかがだったでしょうか?

特に、太陽光発電システムをお持ちのオーナー様にとって、卒FITは重大な課題ですのであらかじめ作戦を練っておくとFITが終わったとしてもスムーズに新しい売電先へ電力を売ることができると思います。

今のご自身の状況にベストな選択をしてくださいね。